迫り来るその時-1-4   水道公論2014年12月号
●緊急事態対策会議 2024年7月
 翌日の党の緊急事態対策会議で、方針案が説明され、選挙区内に南海トラフ地震津波襲来予定地を持つ多くの議員から、じっくり検討するよう多数の意見が出された。しかし首相はこれを押し切ってしまった。時間がたてばたつほど、思い切った復興の出発が遅れ、危機感がなくなっていくことが予想された。
これまで総意を得てから物事を進めるやり方からはずれ、いろいろな物議を醸すことが必至であった。建築規制と民間建築への補助、避難建物となる高層住宅などの強制的建設がこれまでの制度に全くなじまない施策であった。
 津波対策として多額の経費と長い期間をかけて10mの高さまで盛り土しても、もし13mの津波が来た場合、軽量の木造住宅ばかりであれば、皆流されて根こそぎ破壊されてしまう。流された建物は他の構造物を破壊する凶器となる。また高台が近くにない場合、どっちみちお金のかかる、安全な相当高い避難建物をあちこちの近い距離に置かなければならない。
 14階高さ42mのコンクリートの建物であれば、同じ津波で4階までは破壊されるが、5階から14階までの10階分の住居と家財はそっくり残り、1階から4階までも構造物は残るため、内装と家財を復旧すれば元に戻る。建物が流されなければ流出する瓦礫は大幅に少なくなり、送電網も流出家屋などによって破壊されることが少なくなり、被害が最小限になるとともに、復旧に要する日数もずっと短くなる。もっと高い津波が来ても人命は保全される。
 ずっと、低層戸建て住宅に住んできた人々が高層住宅に入るだろうかという疑念も大きかった。しかし高齢化が進んでいる時代に、管理の手間が少なく、昇降機が設置されバリアフリーにできやすい集合住宅の方が結局住みやすいものとした。

●一ヶ月後  2024年8月
神津島大噴火の被害が分かってきた。避難体制が出来ていたため人的被害は数百人に抑えられたが、静岡県では2万戸の家屋が破壊流出した。
噴出物は推定10km3にもなり、排出物に火山ガス起源の霧や細かい灰が多かったためかその塵は広く全世界をおおった。太陽光が遮られ、北米や欧州などの高緯度地域では収穫が大幅に低下することが予想された。
 世界の気象にまで大きく影響する噴火は日本では千年に一度というくらいの大規模なものであったが、世界では100~200年に一回はおきていて、未曾有というものではなかった。最近では1783年のアイスランドのラキ火山、1815年のインドネシアのスンバラ島のタンボラ山の大噴火があった。