逆転の思想−155        目次
              水道公論2016年4月号


  大型客船の可能性
 昨年北欧ツアーに参加して驚いたことの一つに、ヘルシンキからストックホルムまでの夜行の船旅があった。夕方5時に出航して朝9時半に到着する夜行ホテル船である。夜行船は珍しいようであるが昔4時間航行の青函連絡船があった。
驚いたのは船の大きさで、シリヤラインの旅客定員2850人の58千トン、フィンランドで建造された13階建てで、大型クルーズ船のようであった。日本のクルーズ船で最大の飛鳥の5万トン、旅客定員960人より大きい。青函連絡船は1万トン未満であった。
 船首の一部が開いて、トレーラー荷台を載せているので、船種としてはフェリー船であろうが、大型クルーズ船のような設備であった。この船が2隻、毎日交互に2都市を往復していて、その日の乗客は約2千人であった。日本人客室乗務員もいる。
 船室はシャワー室とトイレ付きの一般ホテル並みであった。出航は午後5時で、景色はまだ明るく、すぐ夕食となった。船内はクルーズ船とはいかないまでも、レストラン、免税店、サウナ、ディスコなどいろいろな設備がある。客室階中央は高くて長い吹き抜けになっていて開放感もある。海は穏やかでゆれを感じなかった。
 夜中船のまわりが真っ暗のなかで船の後方遠くにずっと灯りがあって、朝明るくなったら、それがけっこう大きい同様のフェリーであることが分かり、望遠で撮った写真から船名を割り出したら、ヴァイキングラインの36千トン、乗客2400人、12階建ての船であった。2社が毎日運行していることは4千人近い大勢の人が移動していることになる。
 夜が明けたので外を見たら狭い島々の間を縫って航行していた。 スウェーデンに入ってからは無数の島があり、約100キロの間何時間も島々の間の狭い航路を縫って進み、景色がいい。所々小さなフェリーがいたので、長さ数キロの大きな島への交通はいいだろうが、百メートル内外の小さな島々にも別荘のような建物がこれも無数にあり、交通や長い寒い冬のことを思うとこれも驚きであった。
 ヘルシンキからストックホルムまで約400km。費用が高くなく、寝ている間に到着するというのは便利である。西日本で大陸からの大型クルーズ船入港が増えているが、九州と上海の距離は約880kmある。現在の大型客船の時速は40km程度で1日近くかかってしまうが、少し速度を上げれば朝到着して、乗船準備して午後出航する効率的な運用ができるようになる。ヘルシンキ、ストックホルムは都市圏として百万人程度で、東シナ海沿岸の人口は北欧と桁違いであるので、関係がもっと改善されれば十万トンクラスの多数のフェリーが定期航路を毎日運行するようになるかもしれない。