逆転の思想−157        目次
              水道公論2016年6月号


  円の価値
 水道公論2012年8月号で紹介した総合的な購買力の比較に使いやすいビッグマック指数であるが、今年1月データでは、為替レートで計算して一番高いのがスイスで764円。2位スウェーデン、3位がノルウエーで6百円台。米国は585円で日本の370円より約6割も高くなっている。農業輸出国であるオーストラリアも444円と2割高い。日本に近いのはタイ、ハンガリー、サウジアラビアなど。
 この時の為替は1ドル118円であった。農産物はなんでも輸入せざるを得ない上に高い関税がかかる日本の方が相当高くなければならないのであるが。韓国は426円、中国は318円、台湾は246円と安いのでそうもいえないのだろうか。
 ビッグマック指数は2000年まで遡って過去のものが入手できる。エコノミスト社のHPから、リスクはあるが思い切ってダウンロードした。
 日本では2000年が294円で、2016年は25%上がっている、一方アメリカは 2.51ドルが4.93ドルへと96%もアップしている。2000年の為替レート106円で円換算すると266円と日本より1割安かった。
 16年間の消費者物価指数の変動は2000年を100とすると日本で101となり、この16年で物価が殆ど上がっていない。米国では138にもなる。日本では総じて物価が上がっていないのにいつのまにかビッグマックだけは25%上がっていた。米国では物価指数が38%増に対してビッグマック指数は96%増と、物価上昇を4割も上回っている。これから日本では価格を上げないようにぎりぎり頑張っているように見える。
 日本でビッグマックが価格上昇していることは、円安の上に農産物の価格が上がる一方、雑貨や電気製品など工業製品の物価が上がっていないことを示しているのだろうか。
 日本と米国のビッグマックの値段が同じになる為替は2000年で117円、2016年で75円となる。為替レートは周期的に変動する。円高だった2012年頃レートが77円付近でビッグマック指数は320円、4.2ドルと為替で計算してほぼ同じであった。
 ということは今後、75円以下の円高になってもおかしくないことを示している。
 輸出型産業は困るだろうが、国民資産を考えると為替レートが1月時点の118円と比べて6割近くも増えることになる。円高になれば輸入農産物の価格が総体的に下がるので、ビッグマックもその分安くなるだろうから、もっと円高でもいいのかもしれない。

注  雑誌では番号が156となっています。