逆転の思想−163        目次
              水道公論2017年1月号


 米国メディアの不思議
 税金逃れの会社作りなどを受託していた会社から大量の情報が漏れて、それが公開され名前のあったアイスランド首相が退陣に追い込まれるなどパナマ文書は世界に大きな影響を与えた。英国のキャメロン首相も父親や自分の関与が明るみに出て評判を落とした。
 英国のEU離脱に関する投票で当初残留派が多かったのに、僅差で離脱となったのはEU離脱問題というより残留派の首相をはらはらさせようと離脱に投票した人がけっこういたためらしい。パナマ文書が出ていなかったら英国は残留を決定していたと思われ、それほど世の中を変える効果があった。
 パナマ文書で不思議なのは米国人がほとんどいないことである。これについて日経ビジネスの6月20日号に記事が出ていて、米国には多数の州でタックスヘイブンと同等の機能が持たれ、外国に頼る必要がないとのこと。
 2千年代に入り、スイス銀行のUBSが米国人の課税回避を支援したとして7.8億ドルの罰金と顧客情報の開示を課せられたのに続き、クレディスイス銀行に28億ドルという巨額の罰金と顧客情報の開示を課し、法律で第三者への顧客情報の提供を禁じていたスイス政府に顧客情報を出させた。スイスの国外からの預かり金融資産は2兆ドルを超え、日本のGDPの半分、スイスのGDPの3倍にもなる。UBSはロンドン銀行間取引金利の不正操作問題でも米国政府に5億ドル支払わされている。
 米国は自国民の課税逃れに厳しい一方、外国に対し米国内外国人講座情報へのアクセスを制限しているそうである。この結果米国がタックスヘイブンとしての存在感を高めていて、税金逃れの富豪に対して批判が強まっている風潮に反している。
 ここで不思議なのは、こんな非道徳的なことになっているのに米国の報道メデイアが黙っていることである。イラク戦争の時、議会の公聴会か何かで、クウェート大使の娘に、悲惨な占領地の病院から逃れてきた少女として嘘の証言をさせたことを追求しないで黙っていたり、自由な報道というが国益をしっかり考えているように感ずる。
 一方、今回の大統領選挙では、報道が相当偏っていたのではないかと言われている。各メディアで支持する対象がいろいろあるようである。
 まわりの国を見ると、メデイアが国の宣伝諜報機関になっている国など国益を最優先しているところが多い。
 我が国はどうであろうか。中立と称しながら国を貶める嘘の報道をして、分かっているのに長期間訂正しなかったり、何事も反日的な一部の周辺国にお伺いをたてたり、国民や国益を毀損することに熱心に見える。どういうメリットがあるのだろうか。

注  雑誌では番号が162となっています。