逆転の思想−168        目次
              水道公論2017年6月号


 世の気まぐれ
 世の中のことを見聞きしていると、些細なことでも大きく批判される事がある一方、変な事が堂々とまかり通ってしまうことがある。
 党の所属議員パーティ発言で復興相が辞任に追い込まれた。東日本大震災についてで、主旨は「これは、まだ東北で、あっちの方だったから良かった。もっと首都圏に近かったりすると、甚大な被害があったと思う」で、「あっちの方だったから良かった」が東北の方々を傷つける不適切なものだということらしい。しかし、東日本大震災で津波被災の救援が大きく遅れたが、東南海地震津波が突然襲ってきていたら人口稠密地域での人的被害、社会的被害が桁違いに大きく、応急の救助、復旧体制も全く足らずひどいことになって、負担が国力を超えるくらいのものになっていたろうし、東日本大震災によってこれまでの津波予測が役立たずであったことや対策の重要性が良く認識されるようになって、備えも前進するようになった。この意味で被害が総体的に少なかったところだったのが「まだ東北で」という表現に込められていると思われ、変な発言ではないと考える。しかも党の所属議員グループの会合であるから発言は、普通、世に出たり、記録に残るものでなく、東北の人が聞いたら怒るだろうと言ってもわざわざ知らせなければ耳に入ることもない。
 特定の人物に照準を定めて貶めることを虎視眈々と狙われていることを気にして敢えて大げさに取り上げたことがおかしいと言えるのではないか。
 変なことが堂々とまかり通ってしまうこととしてふるさと納税制度がある。地方税分を住んでいる地方でないところに寄付する。そうすると翌年減税され、また特典がもらえるもので、仕組みはけっこう複雑のようある。ふるさとというが、育ったところだけでなく、被災地や応援したいところなど、いくつでもいいらしい。5箇所以下なら税手続きが簡単にできる。
 ほぼ寄付した分だけ減税されるので、もともと損はないし、その上けっこう豪華な返礼品がもらえる。寄付先に縛りがないので結局、高価な返礼品を出すところに送ることになる。2015年では返礼品費の寄付額に対する割合が4割を超えていたそうである。高額納税者にとってあちこちの高額返礼品をもらえる大幅な減税措置で、結局税収総額を大幅に減らすことになる。
 4月に総務省から、商品券などは避けることや、返礼比率の上限を3割以内にするなどの通知が出ていて、3割でも非常におかしいのに通知の強制力はないとのこと。
 飲み過ぎが原因の生活習慣病が多く、医療費が多額に上って大きな社会的問題になっているのだから、税率の低い第三のビールをはじめとして酒類の税率を上げても良いのであるが、非常に難しい一方、こういう変なことが堂々とまかり通っている。