逆転の思想−169        目次
              水道公論2017年7月号


 電線地中化の前にやるべきこと
 水辺の写真取材で時々欧州に出かけるが、街中を歩いていて感ずるのが空中架線の少なさである。都市部では地中化が進んでいると思われるので、住宅地や街の周辺部など地中化が実施されていないと考えられるところでの印象である。
 以前千葉県の戸建て住宅団地開発が進む地域を定期的にバスで通過することがあって、そこでは電線地中化が実施された街区もあった。一度バスを降りて、配管工事中の現場を外から眺めたら下水道と上水道は一段下に埋設されていて、マンホール、弁ますなどが立ち上がったところで、黄色い電線管の設置が進んでいた。区画道路の中はこのパイプだらけであった。新規の住宅開発でもこんな状況であるから既成市街地では至難のわざになるだろう。
 電線地中化の街区のそばに、地中化してない街区があり、新設なので電線も最小限になっているはずであるが、何でというほど架空線だらけであった。
 電線というと、100vと200vの電力線、電話線、有線放送が思い浮かぶが理解できないほど混んでいた。
 電線を地中化すると、地震、津波などに襲われた場合、損害箇所を見つけて復旧するのが大変難しい。しかも多種の電線の存在は復旧の探索を飛躍的に難しくする。地中化の前に電線の数を減らすことが重要であると思う。
 電線が多い要因の一つとして電力線の複雑化があると思われる。電力線は欧州が200vに対し、日本では家庭用は100vでほかに工場用などの3線式200vがある。ただ単純でなく、家庭への電力線は単相3線式という、アース(中立)、+100V、ー100Vの3線が引き込まれ、電灯や家電の100V機器に用いられる他+100Vと−100Vの2本でエアコンの200V機器を動かす。住宅街であれば3線式200Vは必要ないので単純な2本より1本多いだけのはずであるがどうしてこういうことになるのであろうか。
 実態がよく分からないままであるが、考えられる基本的対策は電話線など情報を送る伝達手段を無線化することであろう。テレビ、携帯電話では電波による方法が確立されているし、無線で大容量の情報を送ることが出来るようになり、またセキュリティ技術も発達して情報の漏洩も防げるようになってきている。電話線、有線放送など無線化して電線を動力線だけにすれば、くもの巣のような現状からある程度改善でき、電線地中化も進みやすくなるのではないか。
 ともかく電線の数を減らすことが優先されるべきであると考える。