逆転の思想−179        目次
              水道公論2018年6月号


 池の管理
 街の池のかい掘りのテレビ番組が面白い。人気があって連載番組になったようである。作業は、池を排水して空にし、生物を食い荒らす特定外来生物などを捕獲、移送し、在来種を池に戻し、池を干上がらせてヘドロから窒素を排出、綺麗な水を入れるもの。どの池も外来種が占拠している。大きなかみつき亀やミシシッピアカミミガメなどのほか、アリゲーターガーまでも。多数捕獲される大きな鯉も外来種ということで、何が出てくのか興味も多い。
 ここで浮きぼりになったのは多くの池が長年適正に管理されていなかったということであろうか。
 街の池は昔は固有水源もあってきれいだったし、管理組織がしっかりしていて定期的にかい掘りされていたのでないだろうか。導水などの水源や地下水がなくなり、水の停滞が進み、家庭排水の流入や、落ち葉の堆積などによって、汚い存在になってしまった。都内の池をみると清澄庭園の池はまだいいように見えるが、井の頭公園、日比谷公園など淀んでいるように感ずる。三四郎池もひどいように見える。
 京都では鴨川、桂川、高瀬川など街中の豊かな流れのほか、無隣庵、平安神宮など有名庭園の池はきれいである。これには琵琶湖疏水の存在がある。琵琶湖疏水の建設時、琵琶湖から蹴上まで導水された水路の位置が高く、東山の山裾に沿って銀閣寺あたりまで北上する水路から当時作庭がはじまった東山庭園群に水が供給された。供給は今も有料で続き、名園の清流を保持していてありがたい。残念なのは見学できるところが少なく、碧雲荘,何有荘,有芳園など由緒ある庭園の多くが非公開であることである。紅葉で有名な永観堂は公開されているが池の大きさに比べ水量が少ないのか少しどんよりしている。
 関東では、川の水を引き込んでいる鹿沼市の古峰園が傑出した存在である。
 都内の有名庭園でも水の改善が考えられないだろうか。水道水の場合、水消費量が多いほど単価が上がる逓増性によって立方メートル当たり300円を超え、逆浸透膜処理費用よりも高くなってしまうと思われる。大きな急速濾過装置の設置、下水再生水の利用、水不足などのときは供給を止められるなどの条件で、水道水を安価で供給するなど、方策が進むことが期待される。
 池の水管理の望ましいレベルは多様であろう。逆浸透膜下水処理水が供給され、水底がはっきり見え、清掃も行き届いているドバイの噴水池もあれば、アオコなどの問題がでなければいいというところもあるだろう。
 日本庭園の場合、浅い砂底や錦鯉の泳ぐ姿を見られるが、少し深い池底は見えない程度のところがいいと思われる。
 TV番組がきっかけで今まで放置されてきた池の管理問題への取り組みの兆しが見られるのはうれしいことである。