逆転の思想−190        目次
              水道公論2019年6月号


 調書作成の依頼
 国が公共団体を通じて実施する毎月勤労統計調査が適正に行われていなかったと問題になった。
 調査依頼は昔第3次下水道整備5カ年計画策定時に関して自治体にお願いした難しい作業を思い出す。1970年頃であるが、第3次下水道整備五カ年計画策定作業で環境基準達成のための下水道整備が柱になり、新米の係長であった自分に環境基準達成のための事業量算定の作業を命じられた。大学での水質汚濁講義とは、全く別の世界のことで、一から計算のやり方を考え、主要水系について公共団体に作業を依頼した。公共団体職員にとって全くなじみのない作業を短期間で行うもので、よくやってもらったものである。作業しないと補助がもらえないと必死でやられたものであろう。当時、春と秋の要望調書、下水道統計の作成作業をはじめ多くの調査を公共団体にお願いしていた。
 昔は書類作成などの事務作業は全部手書きであったが今は省力化が進んでいる。確定申告書類作業など、去年の住所や収入源など入力済みの表に今年の分を入力すればよく、計算も自動でやってくれて、書類作成作業が以前の1/10程度になっているのでないだろうか。国による各種調査も二重手間な作業をなくすなど省力化しなければならない。
 事務作業の省力化が進むと担当職員も少なくなる。こういう状況では外から依頼された作業の実施が非常に重荷になる。特に手書きなどになると完全に嫌気のもととなるであろう。勤労統計調査の調書は省力化が進んでいるのだろうか
 今回の問題は、大企業について全数調査しなければならなかったのに東京都について1/3の調査で済ませたことにあるとされる。
 統計調査はいろいろな実施方法があるので、データの信頼性、調査の作業量などを考慮しながら、判断すればいい話と思われるが作業方法まで規定されていてそれに違反していると、やり玉に上げられている。
 ただ調査対象数が多いなら抽出調査でもいいはずで、低めになっているというのは解せないところであるが、出てきた数値を抽出率で割って総額を算定することをやっていなかったらしい。そうとすると全くひどい。全数調査の建前からできなかったのだろうか。
 一番の問題は、実施団体が判断して実施すればいいものを改訂が難しい規定で縛っていることにあると考える。国会の野党では、通達などによって政府に勝手に決められることに対する反発から細かいことまで法律で規定しようという基本方針があるようで、法律も簡単に変えることができるものならいいが、細かすぎるため改正対象が多すぎて、世の中の動きについて行けず時代遅れのものがどんどん増えているようである。ITによって時代の変化がもっと激しくなり、制度改定の遅れは国として致命傷になる。
 このへんの基本改革が最も必要と考える。