逆転の思想-197        目次

              水道公論2020年2月号


 法制度改革の牛歩
 安定政権が記録的になるほど続いているというが、法制度の改革は前進しているという感じがしない。法律や諸制度はDNAのようなもので世の中の変化に速やかに対応進化していかなければ国の社会経済がうまくまわらなくなる。
 停滞していることは、問題がますます悪化していることにつながる。国内だけでも高齢化の他に、一極集中の危険性、貧富の格差拡大、過疎化、放置林、空き家などの大きな問題があるのに改善対策が全く遅れているように思う。国際IT企業による個人情報などの悪用対策などはある程度は検討が進んでいるようであるが。
 その原因の一つに、野党も一般メディアも失言やスキャンダルなどで足を引っ張ることに精を出す一方、大きな改革を主張することは当然不利益を被る一部の分野があるので、そういう方面からの批判が怖く、八方美人的な政策提言しか出来ないことがあると考える。
 国政の場で制度改革の真面目な議論をしてもメデイアが取り上げないこともあるのだろう。対抗する野党や批判側に具体案がないから与党も議論が多い抜本的改革に踏み出さない状態に安住しているように思える。
 以前、耕作廃棄地、放置林の対策として私有財産に対する公共の関与強化を取り上げたが、今年の台風災害で、放置林によると思われる、流木が多かったり、倒壊による電力線損傷などがけっこうあったりで、問題がよりひどくなっているように感ずる。
 本来富裕層や経済界の圧力を受けないはずの野党が打ち出せる政策として、どんどん広がる貧富の格差是正や中間層の没落対策がある。その一つとして富裕層への課税強化があるが批判をおそれてだろうか出てこない。
 実現可能な方策として、証券や債券の収入に対して課税強化することがある。
 2018年度の国の税収は消費税17・5兆、法人税12兆、給与所得税11.4兆、配当・株譲渡税5.2兆で、配当株所得税が給与所得税の半分になっている。
 配当等の税金計算は一般的に総合課税でなく、分離課税になっていて、税率は国税で15%程度で、4百万円程度の給与所得税に相当すると思われる。
 資産による所得が給与などの所得と比べて課税率が低いのに半分と言うことは、所得額が相当多く、富裕層の税率が低いということを示していると思われる。
 この税率を3~4割に引き上げることが考えられる。3割にすると給与所得一千万円程度、4割にすると2千万円程度くらいの税額と同程度になる。
 累進制により、少額の収入には課税率を引き下げることで、一般人の課税強化にならないようにできる。
 思い切った法制度改革ができないと化石の国になってしまう