逆転の思想-199        目次

              水道公論2020年4月号


 再びビッグマック指数
 新型肺炎、貿易戦争などが経済にどういう展開をもたらすのか先が見えない。貯金で生活費不足をまかなっている高齢者層にとってはインフレにでもなったら、ゼロ金利の資産が減少してしまうので今のデフレ状態が一番いいのだが。
 物価というとビッグマック指数が身近で、これまで2012年8月と2016年6月号で取り上げさせていただいた。
 2020年の1月をみると、日本は390円、円換算で米国625円、韓国430円、中国345円である。 韓国が1割高く、中国もあまり変わらなくなった状態では、日本観光の際、日用品など爆買いするのは当前に見える。欧州でも物価の安い隣国に食料やガソリンなど買い物に出かけることが報道されている。高いのはスイス739円、ノルウエー657円で、ブラジルでも529円する。
 ビッグマック価格は2010年からの10年間に現地通貨ベースで韓国は3割、日本は約2割、米国は6割、中国は7割上がっている。我が国は長期のデフレ状態であるが、10年で2割は年にすると約2%で、上がっているものもあるのだと感じさせられる。
 ところが、円貨ベースで考えると米国は9割増、中国は2倍に、韓国は6割も上がっている。これはドル円為替の変動によるもので2010年が91.5円であったものが110.4円と2割も円安になっているためである。
 韓国も牛肉や小麦粉などは輸入しているのだろうし、人件費は日本より安いと思われるので値段の差は不思議である。
 何故こんなに安くなっているかであるが日本での企業競争が厳しいことと顧客の目が厳しいことによるのでないだろうか。
 昔テレビや冷蔵庫など同じような電気製品を沢山の企業が作っていたように、日本では外国に比べ企業間の競争が厳しいように感ずる。一般的な食べ物の価格はもっと広い範囲の競争となり、回りに引っ張られると考えられ、外食産業では牛丼の安さから、ビッグマックも値上げはしているがコストを極力絞り、大幅値上げを回避しているように思われる。
 各企業は海外展開を含め、企業存続のために積極的な投資は行っているだろうが、経営が厳しいので資金を利子を払ってまでお金を借りることがなく、このため銀行は資金需要がないため貸出先がなくなり、円を欲しいということがなくなって円買い圧力が生まれない。
 消費者が結局得をする企業文化が最低の利益しか生まず、日本の株や金融商品を買おうということがなくなり、円安につながっているようにも思える。
 はかない貯蓄が頼りの高齢者はなんでも安くていいので、デフレでいいのかもしれないが、
昨年第四半期のGDP成長率が年率換算で6・3%マイナスや新型肺炎による生産消費の大幅な落ち込みなど大嵐でどうなるのだろうか。