逆転の思想-200        目次

              水道公論2020年5月号


 ITで山間地域救済を
 人里離れた一軒家の住人を取材するテレビ番組は脚色されたものでない人生ドラマを紹介してくれるのでよく見ている。ただし、いつも寂しさを感じる。
 番組では多くの場合、高齢者一人だけの暮らしであり、びっくりするくらい元気で、農作業や家事に励んでいるが、あと10年もするとこれらの多くの一軒家が住む人のいないことになってしまうだろうから。放置される山林もますます増えるであろう。
 道路の維持補修のことも気になる。一軒家に行く途中、狭いが何キロメートルも舗装されている道路が続く。昔はある程度の戸数があったので長距離の道を舗装できたのだろうが、今や一戸だけのためにこれだけ長い距離の道路を維持補修する力は公共団体にないであろう。道路が通れなくなったら、地域はませます荒廃する。
 一軒家に行く途中、行けども行けども斜面の林が続くのを見ると我が国も結構広いものと感ずる。日頃各地で鉄道に乗るとどこも家だらけであるのと大いに違う。確かに国土の3/4が山地なのだからそうなのだが。
 猪、鹿、猿などの動物による作物被害も深刻で、山間地域での農業が難しくなっている。
 無策のまま我が国の広い地域で国土の荒廃が加速している。
 人が去ってしまいつつある広大な地域で再び人が暮らせる環境にしていかなければならない。なんといってもIT技術の進展が期待される。
 まず、過疎地の林道でも安心して運んでくれる自動運転技術の進展がある。無人運転になると、燃料費など自動車の運行コストだけと大幅に安くなる。人や物の輸送を総合的にIT管理することにより、少量生産農産物の出荷、通勤、通学や高齢者の通院、買い物などが手軽に利用できるようになる。
 この結果、人里離れたところでも安心して生計がたてやすくなる。先祖伝来の家に暮らす人々の他に、自然を好む人の移住ももっと期待できるだろう。
 また、山林管理のロボット技術がある。間伐、伐採、材木の積み出しなどをやってくれるロボットがあれば、地形の険しい日本でも木材生産の採算が取れるようになると思われる。そうなれば道路の保守管理もできるようになるであろう。また、斜面の耕作もロボット技術で進めることが出来るだろう。松茸も増産できるのではないか。
 大半が山地である我が国であるので、IT技術が生きて経済が成り立つようになると豊かで元気な国になると思われるのだが。