東京湾周辺では住宅の需要が強く、高層マンションの建築が進んでいる。特に海岸線にあって眺めの良い物件に人気がある。今後ともこの動きは進むと思われる。
一方、これまでの東京湾沿岸開発によって干潟や浅瀬が姿を消し、その復活が求められている。
開発する場合、できるだけ水面を確保して、住宅需要と環境改善を兼ね備えた案を提案するものである。東京湾の干潟や浅瀬はこれまで埋め立てにより大幅に減少している。海岸線に近い住宅開発は水辺を復活させる重要な機会である。
文責 亀田 泰武 |
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1,開発と水辺の確保
都心回帰、地価の低下により今後貯木場、沿岸工場用地での高層住宅地開発が予想される。ひとつが貯木場などの水辺を陸地にする開発に対するもの、もう一つは既存の工場用地などを高層住宅に再開発するものである。内湾の環境を保全していくためには、干潟、水面などの面積を確保するする必要がある。埋め立てなどで陸地面積を増やすことは、水面積の減少、水交換の減少を招くものであり、極力避ける必要がある。
高層マンションは直接の敷地面積が狭くていいため、水面積を広くとることが可能である。従来緑地の確保が推奨されてきたが、干潟や浅瀬の形成は海水が出入りできる海岸線付近でないとできないものであり、こちらを優先すべきである。この際開発者に対するインセンテイブが必要であり、容積率の緩和、土地税制の配慮などが求められる。
2,計画の際の配慮事項
2−1 水辺の価値と扱い
夏期の水面からの蒸発量は緑地より大きく、蒸発熱が大きいので、大気の温度上昇をそれだけ低下させ、ヒートアイランド対策に寄与する。水辺は心を落ち着かせる効果があり、住宅地の中に置くことは住環境の上からも非常に価値があることと考えられる。一部の水辺を子供の遊び場とすることも可能である。
高密度住宅地の中の水辺なので、水の停滞による腐敗、経過悪化が懸念されるので、海水の一部循環も必要と考えられる。
2−2 容積制限の緩和
水辺の確保が開発者にとってもプラスの方向に考えなければならない。水面積を確保した場合、その分より多くの容積率緩和ができる配慮が必要。工場用地などの用途地域変更の際、容積率を例えば300%と設定し、開発の際水面積を5割確保したら、100%プラスして400%に緩和するなど。
2−3 税制の優遇
開発の経緯によるが、既存の土地を開発して新たに水面をとる場合など、確保された水面に対し、固定資産税の軽減などの優遇税制を行うことが望ましい。、
2−3 制度上の課題
生み出された水辺が法制度上どうなるのかの課題がある。公有水面としての扱いは数々の課題を生み出す。陸地内の池とすれば、制度上は良さそうに見えるが、水面と陸地との境界に関することであり、制度的に無理なく事業化できるようにしなければならない。制度の改善提案については今後の検討していく。
2−4 高潮時の配慮
海辺とすることは干満により外水が出入りすることになる。管理の上からは、一箇所のゲートから海水が出入りするようになると考えられる。
一方高潮によって浸水が起こらないような配慮がいる。大嵐などで水位が上がったときのことも考えておかなければいけない。東京湾の既往最高潮位は3.55m、防潮堤高は6.5mとなっている。一方平均満潮位は2.1m、干潮位は0m。防潮ゲートが海側にないケースでは、防潮堤計画水位で開発を計画できる場合はいいが、難しい場合、既往最高潮位などで設計し、これを超える場合、汐留ゲートを閉める操作ができる体制が求められる。 |
3 開発例
3ヘクタールの開発を考える。水面を確保するので建物の容積率を400%までに緩和するケースを考える。建物延べ面積は12ヘクタール。40階建ての高層マンション2棟を考える。戸数は750戸内外。その他、駐車場ビル、幼稚園も配置、管理施設、店などはマンションの1階で考える。
道路をピア形式にするなど、できるだけ水面を保持するように考えると、水面積は5割強の1.6ヘクタール確保できる。このように高層住宅開発では、それほど無理なく広い水辺を確保することが可能であり、推進すべきである。 |
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