海に土砂の供給を(排砂事業の勧め) 
 昔は洪水の度に大河川から大量の土砂が流され、これが広大な砂浜を形成していました。これらの土砂は一時的に生態系を乱しますが、長い目で見ると新鮮な水環境を形成し、生物のためにもいいものです。大量の小石や砂の供給によって、珪藻プランクトンに必要なケイ素も十分補給されると考えます。
 東北地方日本海側では、この砂によって至る所に広大な砂浜が形成され、風により大量に飛ばされて作物がやられてしまうことが大問題でした。このため海岸沿いに広い砂防林が苦労して育てられ今も残っています。
 現在、治水、利水ダムや、砂防ダムの整備が進み、自然災害の発生防止に多大な貢献をしていますが、一方で土砂の大流出が減少しています。海岸では砂が海の流れによって流されていきますが、砂の補給がないため、飛砂問題はなくなりましたが、一方で砂浜の減少、海岸線の浸食が著しくなっています。
 富山県黒部川は黒部峡谷を流れ、急流でこれまでの大量の土砂流出によって扇状地が形成されてきました。現在、黒部、仙人谷、出し平、宇奈月など多数のダムが建設されています。川の流れが急なので、ダムに大量の土砂が堆積してきました。また黒部川河口地域は急激に深くなる富山湾のせいでしょうか、古くから海岸の浸食による後退が起きています。これらの状況を踏まえて洪水時期に、出し平、宇奈月ダムの排砂ゲートを開けて、たまった土砂を流出させることが行われています。
 平成3年に出し平ダムで最初に実施されたときは、長年の間に湖底に貯まった木 の葉等の有機物が土砂と共に流出し、それらの有機物を含む土が途中でたまってしまう問題がありました。これを踏まえて、流れだしの時期、タイミングなど工夫して、現在では円滑に実施されています。これまで10回排砂が行われ、平成13年では大雨のあった6月19日から約2日間、6月30日から約1日間実施されています。また学識経験者による事業の評価組織も機能しています。
 排砂事業は黒部河川工事事務所関西電力のHPに載っています

 こういう事業が拡大され、土砂の供給が増すことにより、海岸の保全だけでなく、ケイ素の補給による良好なプランクトンの増殖、海底の新鮮な環境形成などが期待されます。

 東京湾でも流域から新たな土砂が供給されるようになって、.海浜が甦ることが望まれます。