あなたはこんなに酸素を減らしている(2018.8改訂)

1、世界各国のエネルギー消費

 人が生きていくためには体内で有機物を燃焼させてエネルギーを生み出していく必要があり、そのため一人一日約500gの酸素が呼吸によって取り込まれ消費されます。
 しかしこの消費量は単に呼吸によるものだけです。人が生活する上で、このほかに食べ物の煮炊き、暖冷房、生活に必要な様々の物資の生産、人やものの輸送などありとあらゆる形のエネルギーが必要です。 このエネルギーを生み出すために石油、天然ガス、石炭が燃料となり、沢山の酸素が使われています。
 この量を調べてみましょう。世界主要国のエネルギー消費(エネルギー源としての一次エネルギー消費を石油換算したもの)は表ー1の通りです。
 日本のエネルギーの一人当り消費量は年間3.38tでアメリカの半分ですが、中国の1.6倍、インドの5.2倍以上も使っています。ヨーロッパ諸国と同じくらいの水準です。
 過去15年の変化を見ると、日本と欧米主要国は削減していますが、その他の国は増えていて中国が2.4倍と突出しています。
 一人当たりCO2排出量で、先進国で少ないのが英仏でGDP当たりCO2排出でもフランスは日本の半分に近く、日本とドイツは同じような感じです。

     表ー1 主要国の一次エネルギー消費(2000年と2015年)とCO2発生量

エネルギー消費 CO2排出 GDP当たりCO2排出
石油換算t/人・年 CO2t/人・年 CO2t/GDP百万ドル・年
2000 2015 比率 2000 2015 比率 2000 2015 比率
日  本 4.08 3.38 0.83 9.42 9.02 0.96 223 192 0.86
アメリカ 8.06 6.82 0.85 19.90 15.80 0.79 442 305 0.69
ドイツ 4.09 3.77 0.92 9.88 8.73 0.88 260 193 0.74
イギリス 3.79 2.78 0.73 9.17 6.12 0.67 260 149 0.57
フランス 4.14 3.70 0.89 5.68 4.42 0.78 147 106 0.72
ロシア 4.22 4.93 1.17 10.30 11.00 1.07 1589 967 0.61
中国 0.90 2.17 2.42 2.51 6.81 2.71 1414 1048 0.74
韓国 4.00 5.35 1.34 9.22 11.40 1.24 610 459 0.75
インドネシア 0.74 0.87 1.18 1.24 1.75 1.41 578 456 0.79
インド 0.42 0.65 1.55 0.85 1.61 1.89 1124 919 0.82
オーストラリア 5.38 5.27 0.98 16.10 15.20 0.94 349 266 0.76

     エネルギー経済統計要覧2018   省エネルギーセンター                      

2、エネルギー消費をカロリーでみると

次にエネルギー消費をカロリーで見てみましょう。わが国の2000年と2015年における状況は次の通りです。

      表ー2 わが国の一次エネルギー源別供給量 
            
年一人当り消費量 (百万kcal)

エネルギー源 2000年 2015年
石炭 7.9 9.9
石油 22.8 17.6
ガス 5.8 8.8
水力 1.5 1.4
原子力 5.5 0.2
新エネルギー 0.6 1.4
合計 44.0 39.3

     エネルギー・経済統計要覧 2018

 2015年の一人当り消費量は39.3百万キロカロリーで一日当りにすると11万キロカロリーになります。食べ物のエネルギーが2000キロカロリーですから、なんと工業製品まで含めてもろもろの用途に食べ物の55倍ものエネルギーが消費されているのです。 一人当り消費量のうち化石エネルギーは36.3百万キロカロリーと大半を占めています。また一日当りにすると10万キロカロリーになります。

3、化石エネルギーの酸素消費

化石エネルギー源からエネルギーを取り出すため燃やすことが必要ですが、燃焼のためどれくらいの酸素が使われるのでしょうか。酸素1gの燃焼で4キロカロリーの熱を出すと考えて下さい。これを使って化石燃料が消費する酸素を計算してみますと、
100、000キロカロリー÷4キロカロリー/g=25,000g
                    となり、  
 一人一日当りの酸素消費量は25kgと呼吸によるものの50倍の量になります。このように人の生活水準を支えるため、呼吸によるものの何十倍の酸素が使われています。

4、酸素のバランス

 次に酸素のバランスで考えてみましょう。食べ物は、様々な植物や植物プランクトンが、太陽の光と炭酸ガス、水を用いて作った有機物がその素となっています。人の体内に取り込んでエネルギー化しても炭酸ガスや水に戻るだけです。
 従って、酸素バランスとしてはプラスマイナスゼロと考えられます。
しかし化石燃料を燃やすことは過去に炭酸同化作用でつくられた、貴重な酸素を減らしていくことになります。
 人の生涯で使ってしまう酸素量を計算してみましょう。

 人の寿命を80年とすると、
 25kg/日*365日*80年 = 730、000kg

 この事は日本人一人の存在によって、地球上の700トンもの酸素を減らしてしまうことを意味します。
700トンの酸素は3000トンの大気中に含まれます。地表1平方メートルの上空の大気量が10トンですから、地表300平方メートルの上空の全酸素量を使ってしまうことになります。

 地球上で現在利用可能な酸素量は人口一人当り20万トンです。700トンはこの量の0.35%に当たります。化石燃料の使用をどんどん抑えて行かないと大変なことになりそうです。

目次へ戻る